食物アレルギーとは
特定のたべものに免疫が過剰に反応して、アレルギー症状が現れるのが食物アレルギーです。食物アレルギーは、アレルゲンを食べるだけではなく。皮膚や目からの侵入でも起こります。アレルゲンとされる特定の食べ物が体内に入ると、免疫機能が「IgE抗体」というタンパク質を産生され、それに応じてあらゆる物質が放出されアレルギー症状が現れます。
食物アレルギーで起こる症状
- 皮膚症状(痒み・発赤・腫れ・蕁麻疹)
- 咳・喘鳴・呼吸困難
- 血圧低下
- 吐き気・嘔吐・腹痛
- 倦怠感
- 不安・意識の低下
- アナフィラキシー
食物アレルギーの症状タイプ
①即時型食物アレルギー
食事後2時間以内にアレルギー症状が現れます。そのうちのほとんどが、15~30分間で発症するため、アナフィラキシーにも注意が必要です。
②遅発型食物アレルギー
食事後6~8時間でアレルギー症状が現れます。
③遅延型食物アレルギー
食事後1~2日後にアレルギー症状が現れます。
受診の目安
お子様の様子で、少しでもおかしいなと感じた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
特に、以下のような症状がみられるときは、早めに受診しましょう。
- 湿疹・肌のカサカサ・乾燥
- 食後すぐに現れた発疹
- 食後にいつも泣く・不機嫌になる
- 食後に喘鳴・咳・嘔吐・下痢症状が現れた
- 特定の食べ物を食べることが増えて症状が現れた
- 意識がない・ぐったりしている(アナフィラキシーショック)
食物アレルギー検査と診断
食物アレルギーの診断には様々な検査があります。
①食物除去試験
食物アレルギーが原因でアトピーや湿疹などが悪化した事が疑われる場合、アレルゲンとされる食物を1~2週間完全除去します。これを食物除去試験といい、当院でも行う事が可能です。それによって、アレルギー症状が軽快すればアレルゲンとして特定できます。ただし、食物除去試験だけでは確定診断はできません。確定診断やどの程度の量からアレルギー症状が出現するかを調べるためには、下記に記した食物負荷試験が必要です。
②食物経口負荷試験
食物経口不可試験は、アレルゲンとして疑われる食物を実際に食べる事でアレルギー症状の有無を確認します。初回の経口負荷試験は、ごく少量から行いますが危険な症状が出る可能性もあり、専門施設での入院やアレルギー専門医の外来で行う事が一般的です。当院では外来での経口負荷試験は行っていないため、経過や検査結果などから必要と判断された患者様には、近隣の専門機関へのご紹介や連携をさせて頂きます。
③血液検査(特異的IgE抗体検査)
血液検査を行い、血中のIgE抗体量を調べます。IgE抗体量が多いと、アレルギー症状も強く現れます。ただし、血中のIgE抗体量とアレルギー症状の強さが一致するとは限りません。血液検査でIgEが上昇しなくてもアレルギー症状が出る事もあり、あくまでアレルギーのリスクを考える目安の一つとお考え下さい。
アレルギーの血液検査についてはお問い合わせを多くいただきますが、当院での実施は可能です。ただし、 6歳未満の乳幼児の方に対しては、食べたことのない食物の検査や複数を同時に行うアレルギー検査は行っておりません。あくまで、疑わしい食物やアレルゲンに絞って検査を行いますのでご了承頂きますようお願い申し上げます。
④皮膚プリックテスト
赤ちゃんの腕などに専用の器具で小さな傷とつけ、そこに疑わしいアレルゲンを薄めたエキスをたらし、皮膚の反応を見る検査です。血液検査で反応がない赤ちゃんでも陽性の反応が出る事もあり、アレルゲンの種類によっては血液検査より有効な検査となります。判定や診断には高度な専門性が必要となります。当院では行っておらず、こちらも経過や検査結果などから必要と判断された患者様には、近隣の専門機関へのご紹介や連携をさせて頂きます。
食物アレルギーの治療
食物アレルギーの治療は、免疫寛容(めんえきかんよう)といって、アレルギー症状の出ない範囲で少量ずつアレルゲンが含まれる食品を摂取することで、体の中のアレルゲンに対する抵抗を少しずつ良くしていく事が目標になります。食物の種類によって、免疫寛容を得られやすいもの、得られにくいものがあり、それぞれ治療の方針も異なります。アレルギーが怖いからと食べさせずに除去する事は、この免疫寛容に到達する可能性を低下させ、また様々な食品を回避することは栄養のバランスを悪化させ、骨や体の成長などにも悪影響を与えます。どのタイミングからどのぐらいの量で始めて行くかなどは、専門的な診療が必要になりますので、必ず小児科と相談しながら進め行く事が大切です。
食物アレルギーQ&A
複数の食べ物がアレルゲンとなることがありますか?
複数の食べ物がアレルギーの原因となることはあります。該当する複数の食べ物を一度に摂取する事は控え、疑われるものを1種ずつ少量ずつ摂取することが必要になります。
食物アレルギーは遺伝しますか?
ご両親に食物のアレルギーや花粉症、アトピーなどのアレルギー疾患があるお子様に食物アレルギーが見られやすい事は事実です。しかしご両親のアレルギーと同じ食べ物が遺伝するとは限らないため、最初から食べさせないようにするといった除去をご家庭で進める事はおすすめしません。離乳食の開始に当たり不安がある場合は、当院にご相談下さい。
アレルギー検査で陰性の場合でも症状が出ることがありますか?
アレルギー症状は、IgE抗体の量だけで起こるとは限りません。また、血液検査が陽性結果であっても無症状のこともあります。
アトピー性皮膚炎を治せば、食物アレルギーを予防できますか?
可能です。乳児期の湿疹や乾燥肌をしっかりと治し、離乳食を適切な時期に始めることで、アレルギーを予防できるという報告があります。また母親の母乳に含まれるさまざまな食物のタンパク質が赤ちゃんにごく少量ずつ摂取されることで、食物アレルギーが予防されやすくなるという報告もございます。皮膚のケアや赤ちゃんの頃の栄養はアレルギー予防にとても大切なものですので、いつでもご相談下さい。